こんにちは!超生産性チャンネルの「やすまる」です!
ここでは、仕事における生産性を格段に向上させる情報を発信していきます
みなさん、VUCA(ブーカ)という言葉はご存じでしょうか?
昨今、ニュースで「VUCA時代を生き抜くためには?」「VUCA時代に求められる力は?」といったタイトルでよく見られます
VUCAとは、Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で
世の中の変化が激しく、先行き不透明で、様々な要因が複雑に絡み合い、明確な判断が難しいという意味です
簡単に説明するとVUCA時代=「将来の予測がとても困難」な時代と覚えてください
昔は、新入社員から定年まで、一つの会社で一つの仕事を真面目にこなすことが美徳とされていました
しかし、昨今テクノロジーの進歩によって数多くの仕事がAIやシステム・機械に置き換えられ、一つの仕事を真面目にこなしているだけでは生き残れなくなっていています
そんな時代の中で「リスキリング(Reskilling)」の必要性が叫ばれています
新しいことを学んで、新しいスキルを身につけ実践して、そして新しい業務や職業に就くこと
とくにグローバル化・デジタル化のニーズの高まりによって、グローバル人材・デジタル人材育成に向けたリスキリングが盛んです
しかし、デジタル人材といっても、
AI・ブロックチェーン・量子コンピューティング等々の技術や
システムエンジニア・ブロックチェーンエンジニア・データサイエンティスト・データストラテジスト等々の職業
そこには多種多様なスキルや職種があり
「何のスキルが必要なのか?どのような業務に活用できるのか?どのような価値を生み出せるか?」
根本的な部分をはじめに考えなくてはいけません
そんなこと言っても、どうすればいいか分からないよー!
会社も上司も手探りの状態だし…
そう思われるのもごもっともです
なぜならVUCAの時代、先行き不透明でどうなるか分からない中で、会社も上司も明確な「解」を持ち合わせていません
だからこそ、具体的なスキルを身に着ける前に「考える力」がより一層求められるのです
書籍紹介
といった中で、本日ご紹介する書籍はコチラ!
佐々木裕子さんが書かれた「実践型クリティカルシンキング」です
本書は、実際の授業内容を収録したものをベースに書かれており、受講者として一緒に考えながらクリティカルシンキングを学べます
実際の授業内容がベースなので、専門書のような取っつきづらさは無く短時間でスラスラと読めました
要点
私なりにまとめた本書の要点は以下の3つです
- クリティカルシンキングとは、「目指すもの」を達成するための思考技術
- クリティカルシンキングは、以下の3つのステップで実行する
(1)「目指すもの」を定義する
(2)「今」と「目指すもの」の「ギャップ」を明らかにする
(3)その「ギャップ」を埋める「打ち手」を考える - クリティカルシンカーになるには、以下の2つの力が必要
● 目指すものを定義する力
● ズームイン・ズームアウトする力
「目指すもの」を達成するための思考ツール
クリティカルシンキングとは、「目指すもの」を達成するためのツールです
あくまで考えを助けるためのツールであり、それ自体が目的でありません
目的を達成するための最速の手段と覚えてください
ロジカルシンキングは、物事を構造的に整理するための情報整理の技術です
ロジカルシンキングによって、物事に道筋を立てながら、結論とその結論に至った根拠・プロセスを論理的に示すことができます
対してクリティカルシンキングは、本質を捉え、目的を戦略的に達成するための思考技術です
クリティカルシンキングを直訳すると「批判的思考」です
批判的とは「そもそもこの目的・手段でよいのか?」「なぜこの目的・手段をとるのか?」と反対する側の問で考えることです
これにより物事を多角的に捉えることができるので、本質を見極めやすくなります
さらに、本質を見極めることができれば、課題に対する手段も効果的なものになるので目的を達成しやすくなるというわけです
クリティカルシンキングは、図にある①~③の順で3つ思考プロセスで進みます
STEP1.「目指すもの」を定義する
「目指すもの」を誰にでもわかるように明確に定義する
これがクリティカルシンキングの
「いちばん最初」の手順であり、かつ「いちばん大事」で「いちばん難しい」ところです
「目指すもの」を定義しないまま取り組みを始めるのは
ゴール地点が分からないまま42.195kmのフルマラソンを走るようなものです
想像してみてくださいゴールの無いフルマラソンは地獄です。
「用意スタート!」の合図で走り始めて、5km地点くらいで
「あれ?ここからずっとまっすぐ進めばいいの?それとも右に行くの?左に行くの?はたまた戻らなきゃいけない?」と自問自答し
とりあえず「右だ!」って右に行って、「あれ?違った!左だ!」って左に行って気づいたらスタート地点に戻っている
そこまで走った距離は15km以上でヘトヘトに疲れている
普通そんなマラソンだったら心が折れますよね?
実際はこんなマラソンありえないですが、これが仕事だとたびたび起こります
なぜなら目的地を決めることが、ビジネスにおいては「いちばん難しい」からです
なので、上司も明確に目的を定めず部下に指示し
部下は何の目的かも分からないまま、とりあえず指示されたことをひたすら対応する
で、役員に報告したら「違う」と言われやり直し
対応した部下は全員疲弊していく
こんなことが日常茶飯事です
なので、何かに取り組む前にはしっかり目的を決める、つまり「目指すもの」を定義する必要があります
「目指すもの」を達成するためには、抽象的な表現は禁止です!
なぜなら抽象的な言葉は人によって捉え方が異なり、また自分自身でも「目指すもの」を見返すタイミングによって少しずつイメージが異なるからです
例えば以下のように言われたらどう思いますか?
われわれの使命は、チーム中心の最大規模のイノベーションと戦略目標に沿った航空宇宙計画を通じて宇宙産業の国際的なリーダーとなることだ
みなさんはこの文章から具体的なゴールイメージはできましたか?
私は全くイメージできませんでした笑
「チーム中心???」
「最大規模のイノベーション???」
「戦略目標に沿った航空宇宙計画???」
正直、頭の中に「?」がいっぱいです
では、このように言われてらどうでしょうか?
1960年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう
これだと何をしたいのかが、めちゃくちゃ明確ですよね
ちなみにこれは、1961年のJ・F・ケネディ米大統領のスピーチの一節です
当時の米ソ冷戦下において、宇宙開発分野ではソ連が相当リードしていました
人工衛星スプートニクやガガーリンによる有人宇宙飛行など、すべてソ連が先行していました
宇宙開発に後れを取ることは、軍事力の面で後れを取ることにつながります
それを避けたいアメリカとして掲げた目標が先ほどの
「1960年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう」という言葉です
実際、このスピーチはアメリカ全土に大きな反響を呼び
1961年時点では、大気圏突入を完全に行うことができるレベルのロケット素材ですらまだ開発できてませんでしたが
スピーチを聞いた科学者たちが自ら積極的に宇宙開発に参加し、そして1969年のアポロ11号で有人での月面着陸に成功しています
このようにワクワクするような具体的なイメージ(目指すもの)を想起させることで
そのゴールまでの道筋が分からなくても、共感した人々が自発的に問題解決し始めたということです
これで「目指すもの」を定義することの大事さを分かっていただけたと思います
STEP2.「今」と「目指すもの」の「ギャップ」を明らかにする
「目指すもの」の定義ができたら、次に今の状態とのギャップを確認します
目指すものを実現に向けて「どのくらい足りてないのか?それは、どうして今はできていないのか?」
という問題を深く考え、ギャップとその原因・理由を明らかにするのがこのステップです
「どのように実現するのか?」という打ち手を考えるのではなく
「なぜできていないのか?」という原因・理由を探ります
たびたび問題の原因を追究せずにいきなりアクションを取ろうとする人がいます
これは例えるなら、医者が「おなかが痛い」といってきた患者に対して、原因も探らず手術をするようなものです
「おなかが痛い」という問題の原因が「ウイルス性の胃腸炎なのか」「盲腸の炎症なのか」「精神的なストレスからなのか」によって、対処は大きく変わりますよね
間違った対処をした場合、変化が無いだけならまだしも、最悪の場合は症状が悪化します
そのようにならないためには、その問題の本質的な原因・理由を探ることがとても重要です
ちなみに本書では書かれていませんが、本質的な部分を特定するためには今の状況をしっかり理解することがポイントです
今を知らずしてギャップの把握はできません
フィギュアスケートでオリンピックを目指すにしても、「自分の今の順位がどこで」「どんなジャンプなどの技ができて」「どんな制約があるのか」などしっかり今を知らなければ
目指すものとの正確なギャップが分からず、課題も定義できないので、主観的ではなく客観的に今の状況を把握することが大切です
STEP3.「ギャップ」を埋める「打ち手」を考える
「目指すもの」が定義され、「本質的な原因・理由」が分かれば、そのあとの打ち手を考えるのは、それほど難しくはありません
逆に言えば、「打ち手」を考えることが難しいようであれば、まだまだ前段の深堀が足りてないということです
例えば、「ダイエット」をする場合の打ち手は無数に考えられます
「ランニング」「ウォーキング」「筋トレ」のようなエクササイズもありますし
「間食を無くす」「炭水化物を控える」「脂肪の吸収を抑えるお茶を飲む」などの食事改善もあります
さらには「脂肪吸引」などの外科的手術で対応する方法も考えられます
このように「打ち手」は様々考えられますが何をするべきでしょうか?
それを決めるために、最初に設定した「目指すもの」と「ギャップ」に照らし合わせる必要があります
「目指すもの」=「引き締まったカラダ」であれば、主な「打ち手」=「エクササイズ」になりますし
「目指すもの」=「昔着ていた服を着る」であれば、主な「打ち手」=「食事制限」になります
また現時点の体重が130kgで目標が70kgであれば、「ギャップ」=60kgもあるので「打ち手」=「脂肪吸引」も選択肢に含めてもよいかもしれません
このように「打ち手」を考える場合には、「目指すもの」「ギャップ」を意識して考えます
目指すものを定義する力
冒頭お伝えしましたがクリティカルシンキングとは「目指すもの」を達成するための思考ツールです
ですから「目指すものを定義する力」が非常に重要です
この「目指すものを定義する力」とは、言い換えると
「目指すもの」を誰もが明確にイメージしやすく表現する力とも言えます
では、誰もが明確にメージできような「目指すもの」の表現は
どのくらい具体的に、どのように定義していけばいいのでしょうか?
その手法として「SMART」で定義するという方法があります
「SMART」とは以下の単語の頭文字をとったものです
- 「S」Specific(具体的)
誰が聞いても目標のイメージが一致する - 「M」Measurable(計測可能)
目的が達成したか客観的な事実(定量・定性)で判断できる(人によって判断が変わらない) - 「A」Action Oriented(アクションに落とせる)
目的達成のためのやるべきアクションが想定できる - 「R」Relevant(意義が明確)
「目指すもの」をなぜ実現しなければならないのかという意義が明確になっている - 「T」Time-Limited(期限が明確)
いつまでに達成すべきか明確な期限がある
ここでみなさんに問題です
「2030年までにDX(デジタル・トランスフォーメーション)人材を1,000人育成する」というような企業の中・長期計画を定めたとします
これは「目指すもの」の定義として十分でしょうか?
十分でないとするならば、何が足りてないと思いますか?
一緒に検証していきましょう
まずSpecific(具体性)について、どうでしょうか?
「DX人材」この言葉から具体的なイメージはできますでしょうか?
たぶんこれだけだとできないと思います
DX人材といっても、経済産業省が定める大きな分類でも5つ、さらにロールまで分割すると15種類にも及びます
さらに具体性という観点でみると、「DX人材を1,000人育成する」ことで、将来的にどのような企業になっているのかイメージできますでしょうか?
そもそも「DX人材の育成」自体は、「目的」ではなくビジネス目標を達成するための「手段」です
例えるなら、「スクワットの筋トレを毎日100回続けるのが”目指す姿”です」と言っているようなもの
スクワットの目的が「ダイエットなのか?」「格闘技の試合に勝つためなのか?」「ボディービルの大会で優勝することなのか?」によって、実施するべきスクワットの意味合いが変わります
なので、具体性を向上させるのであれば、あたかも2030年の未来に行って見てきたきたかのように「目指すもの」を具体的にイメージして、企業の在りようを語れるのがベストです
Measurable(計測可能)については、どうでしょうか?
1,000人という定量的な目標数値があるからOKでしょうか?
たしかに1,000人という定量的な数値目標があるので一見問題ないように思えます
しかし、何をもって「人材育成ができた」と判断するのでしょうか?
この判断基準が無いと判断は大変困難です
人材の場合であれば、何かしら試験やテストなどで判断するといった方法が考えられます
その評価・判断のポイントを明記すると「目指すもの」がより具体的に整理されます
次は、Action Oriented(アクションに落とせる)です
この観点については、どうでしょうか?
「Specific」「Measurable」の観点が曖昧なので、育成といっても「座学で勉強するのがよいのか」「OJTで実践形式で学ぶのがよいのか」もしくは「両方必要なのか」の方向性が見えないです
なので、「Specific」「Measurable」を明確にすることでアクションに落としやすくする必要があります
Relevant(意義が明確)はどうでしょうか?
「なぜ」DX人材の育成が必要なのかの理由が無いので、聞いた人たちが自発的に動きにくいです
なので、しっかり背景やその目的を明確にし、自ら動いてくれるような内容にする必要があります
企業で言ったら「なぜ」の理由を「会社のビジョン」を実現するためとして、「ビジョン」と整合が取れているかという観点でみるのでもよいと思います
最後はTime-Limited(期限が明確)です
これは2030年という明確な期限があるのでOKです
このようにSMARTの観点で「目指すもの」を定義することで、ブレずに一つの目的地に向かって進むことが可能になります
参考までに、同じSMARTの頭文字をとった手法で、個人の目標設定をする手法があります
- Specific(具体的に)
- Measurable(計測可能な)
- Achievable(達成可能な)
- Related(経営目標に関連した)
- Time-bound(期限を定めた)
主に異なるのが、Achievable(達成可能な)Related(経営目標に関連した)の2点です
個人の場合は、その目標が達成可能なレベルでないと
「こんなん無理だよ」「できっこない」とモチベーションダウンにつながり
定めた目標が絵にかいた餅になってしまいます
また、その目標が会社の経営目標の沿っていないと
一人だけ違った方向に進むことになりますし、評価もされません
なので、「達成可能な」そして「経営目標に関連した」目標で設定することが重要です
会社の目標は最初の「SMART」で設定し、それに従って個人の目標を上記の「SMART」で設定すれば、組織と個人両方がうまく機能します
ズームイン・ズームアウトする力
STEP2「ギャップ」とSTEP3「打ち手」を考える際に必要な力が「ズームイン・ズームアウトの力」です
どのような力なのかというと
「ズームイン」は、細かく砕いて核心に迫る力≒ロジカルシンキング(垂直思考)
「ズームアウト」は、思考や発想の枠を広げる力≒ラテラルシンキング(水平思考)
例えば、「残業をゼロにしたい」という目的が定義されたとしたら、現状は「残業が平均X時間発生している」というのが目指す姿と今のギャップです
この残業の実態について
「みんなが総じて残業しているのか?特定の部門のみで発生しているのか?」
「特定の部門のみで発生しているのであれば、なぜその部門では残業が多いのか?」など
細かく砕きながら明確な問題点に迫るのが「ズームイン」です
上記とは別の観点で
「そもそも残業しなければならないほどの業務量は本当にあるのか?」
「残業代が目当てで残業しいるのではないか?」など
少し視点を引いて考え、観点を広げるのが「ズームアウト」です
改めて本書の要点は以下の3つです
- クリティカルシンキングとは、「目指すもの」を達成するための思考技術
- クリティカルシンキングは、以下の3つのステップで実行する
(1)「目指すもの」を定義する
(2)「今」と「目指すもの」の「ギャップ」を明らかにする
(3)その「ギャップ」を埋める「打ち手」を考える - クリティカルシンカーになるには、以下の2つの力が必要
● 目指すものを定義する力
● ズームイン・ズームアウトする力
ここでは概要のみをお伝えしましたが、本書には実践形式で学べる事例がたくさんありますので、興味があればお買い求めください