①集中力が人生の成功を左右する。成功を手にするためには、目先の欲望に負けずに大事なことにコツコツ取り組める能力が必要不可欠
②獣(≒本能)の力は、単純で過敏だが、超絶パワーを発揮する! なので、この力を狙った方向へ導くことが重要
③獣の力を使うために、集中力を高める食事と(地中海食など)、適切な休息方法(マイクロブレイクハイパー・アクティブブレイクなど)で体調を整える。
④土台が出来上がったら、ゲームにハマる原理を用いた「報酬感覚プランニング」や「ルーティン」によって、力をコントロールする
⑤さらに、セルフイメージ・自己の客観視などの調教師(≒理性)の力を使って、獣の力が暴走しない様にする
2016年に計量経済学の大家であるジェームス・ヘックマンが「人生の成功に必要な要素とはなにか?」という疑問について調査しました
その調査内容とは、英・米の数万人の子供たちにIQと性格テストを行い、その数十年後の年収や健康状態を再チェックしたものです
その結果分かったのが、
「人生の成功に最も必要な要素は、頭の良さではなく “誠実性” である」
ということでした
ここでいう「誠実性」とは、目先の欲望に負けずに大事なことにコツコツ取り組める能力。つまり、目標に向かって集中力して取り組む力を指します
では、この集中力を高めるためにはどのようにすれば良いのか?
人間の行動の起点は、大きく2つに分けられます
一つは、「本能的な欲望」
これは脳の「大脳辺縁系」と呼ばれる生命維持活動に深く関連した機能に関連しており、動機付け・情動・本能行動などに関与します
そして、もう一つは「理性」
これは脳の「前頭前皮質」と呼ばれる思考や創造性を司る機関に関連しており、計画的な行動、注意力、社会的な行動規範、人格の発現など、他の動物と大きく異なるヒトをヒトたらしめる重要な機能です
本書では、本能的な欲望を「獣の力」、理性を「調教師の力」と呼んでいます
この2つによって、人間は行動を開始します
①シンプルで具体的な分かりやすいものを好み、複雑で抽象的な理解に時間を要するものを避ける
②あらゆる刺激に敏感に反応する
③一瞬のスピードで判断し、行動する
①理論性を武器に使う
②エネルギー消費が多い
③パワーが弱い
生物が生存競争に勝ち抜くためには、貴重なエネルギーを如何に効率的に使うか、如何に危機的状況を瞬時に察知するかが求められてきました
その生存プログラムによって生き永らえてきた一方で、現代の情報化社会においては、スマホやテレビなどの多くのメディアの刺激にパワフルな「獣の力」が反応してしまい、力の弱い「調教師」では対処できず、集中力が散漫になりやすい状況になっています
ちなみに、「現代人が1日に受け取る情報量は、平安時代の一生分であり江戸時代の1年分」だそうです
人類の祖先がサルから分岐したのが600万年前
その後580万年の時を経て前頭前皮質が発達し、ホモ・サピエンスが抽象的な思考を獲得したのが20万年前
長い目で見れば、ようやく理性を手に入れたばかりです
その進化スピードに対して、昨今の急激な情報量の増加に人の進化が追いつけるはずがありません
なので、この獣の力を抑制するのではなく、如何にうまくコントロールするかが集中力を高める上で重要な要素になります
獣の力をコントロール方法を述べる前に、まずは獣の力を狙った方向に使えるようにしなければなりません
そのためには、食事・運動・休息で体調を整える必要があります
生物の生存プログラムの一つは、「食料」を手に入れてカロリーと栄養で身体を満たすことです
なので、それが最低限達成されなければ、獣は他のタスクに見向きもしてくれないのです
では、何でもかんでも食べればいいと言うわけではありません
どのような食事が脳機能を向上させてくれるのか?
本書では、脳機能を向上させてくれる食事に「地中海食」を挙げています
地中海食には、脳に働きに欠かせない以下の栄養素が含まれています
- 鉄分、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル
- ビタミンD
- 葉酸、ビタミンB12
- オメガ3脂肪酸
- コリン
- 必須アミノ酸
- Sアデノシルメチオニン
では、具体的にどのような食事なのか?
それは以下の食品です
[全粒粉物]:玄米、オートミール、キヌアなど
[葉物野菜]:ほうれん草、ケール、レタス、ちんげん菜など
[ナッツ類]:クルミ、マカダミア、アーモンドなど
[豆類]:レンズ豆、大豆、ひよこ豆など
[ベリー類]:ブルーベリー、イチゴ、ラズベリーなど
[鳥肉]:ニワトリ、鴨など
[その他野菜]:タマネギ、ブロッコリー、ニンジンなど
[魚介類]:サーモン、サバ、マス、ニシンなど
[ワイン]:主に赤ワイン(グラス一杯150mlまで)
[エキストラバージンオリーブオイル]
最大心拍数の約30%という負荷(ウォーキング程度の負荷)を10分続けただけでも脳機能が改善し、認知テストで集中力と記憶力で有意な向上が見られたそうです
そして、さらに心拍数を限界まで高めるほどの高負荷の運動をすれば、かなりの集中力アップに効果があります
これは、激しい運動によって、脳が余分なことを考えられなくなり、そのおかげで脳にたまったストレスが解き放たれリフレッシュできたからというわけです
ただし、身体が疲れ切っているときや睡眠不足の時は逆にストレスが強くなりすぎてしまうので注意が必要です
フロリダ州立大学の研究で「高い集中力とセルフコントロール能力が欲しい」と答えた被験者ほど、実際には目の前のタスクに集中して取り組めない傾向があるということが判明しました
つまり、「集中力を追い求める人ほど、実際のパフォーマンスは低かった」ということです
その理由として、自己肯定感があります
集中力は誰しも長時間は続かないものです
それなのに、途中で集中力が途切れてしまったことで「自分は集中力がない」と「自責の念」にかられ、ストレスを感じ、集中力を低下させてしまう
調教師はストレスに弱いので悪循環に陥ってしまいます
なので、これを解決するためには、割り切って適度に休息をとることが重要です
数十秒から数分のマイクロブレイクでも、その後の集中力が維持されタスクのエラーが大きく減ったとの報告もあります
そして、どうしても疲れ切っている場合は睡眠をとりましょう
30分以内の昼寝を挟むことで生産性が大幅に向上したという研究結果もあります
ムリせず、適度に休むことが長期的な生産性向上につながるので、休むことを悪とせずぜひ休んでください!
仕事や勉強だと30分も続かないのに、なぜかゲームの場合は気づいたら2、3時間経っている
そんなことよくありますよね?
このゲームにハマる原理を使えば、何時間でも集中してタスクを実行できます
□ ゴールに向けて、役に立つ「報酬の予感」を与える
□ 難しすぎず、易しすぎず、最適な難易度のタスクを与える
この2つがあることで、自然とゲームに没頭してしまいます
そこで、この要素を上手く利用し、仕事や勉強でも集中するためのテクニックをまとめたものが本書で紹介されている報酬感覚プランニングというシートです
このシートは2種類あり、中長期的な目標を設定する<基本設定シート>と、そこで設定した目標を実現するた目に毎日のタスクを実行しやすくするための<実践設定シート>があります
まずは、<基本設定シート>で以下の5点を設定します
①ターゲット:
自分にとって最も重要な目標
②重要度チェック:
上記の目標を達成しなければならない理由のうち、最も大事なものを一つだけ選択
③具像イメージング:
①で選んだ目標をより具体的に、頭の中で映像を浮かべやすい内容にする(他の人に話しても情景が伝わるくらい鮮明に)
④リバースプランニング:
①で選んだ目標を「達成した未来」から現在にさかのぼる形で、いくつかの短期目標を3〜5つ設定
⑤デイリータスク設定:
④で決めた短期目標の中から、最も締め切りが近いものを選び、それを達成するために毎日やるべきタスクを設定。タスクは数分から最長3時間くらいで終わるような内容で設定。
タスクはなるべく細分化したほうが最適な難易度になり、かつ「報酬の予感」を維持しやすくなります
上記が設定できたら次に、<実践設定シート>を作成します
①デイリータスク選択:
基本設定で考えたデイリータスクの中から3〜5つ選択
②障害コントラスト:
①のデイリータスクを達成する際に、発生しそうなトラブルを記載。例:ついスマホを触ってしまう
③障害フィックス:
②で書き出したトラブルに対して、あなたが取れそうな対策を記載。例:障害「スマホが気になる」→対策「スマホを目につかない場所に置く」
④質問型アクション:
①で選択したデイリータスクについて、「誰がいつ、どこで何を実行するのか?」という書き方で質問形式にアクションを変換して記載。「いつ、どこで」を入れることで高い確率でゴールを達成しやすくなります。例:自分、山田太郎は、午前7時に起きて多摩川で3kmのランニングをするか?
⑤現実イメージング:
④の質問型アクションを達成するまでのプロセスを、できるだけリアルに頭の中に思い描く。例:④の例文に続いて、「6時45分に起きて、ランニングウェアに着替える自分」→「自宅の玄関前でランニングシューズを用意する自分」
⑥固定式ビジュアルリマインダー:
④の質問型アクションを思い出させるものを、目に見える場所に置く
上記2つのシートを作成することで、獣が目標に向かって力を発揮しやすくなります
一流のアスリートが多く実践しているルーティン
例えば、元プロ野球選手のイチローはバッターボックスに立った時に、バットを立ててスタンド方向へ腕を伸ばし、袖を少し捲るというルーティンがあります
これはスポーツのみならず、普段の生活でもその効果が証明されています
ある実験では、被験者が認知テストの前に指を10回鳴らすというルーティンを入れただけで、成績が21%アップしたという実験結果が報告されました
このように毎回、集中したい作業に取り掛かる前に自分なりのルーティンを取り入れることで、自然と集中状態を作り出せます
ただし、ルーティンの効果を得るためには、一定回数の反復動作による習慣化が必要なので、根気強く取り組むことが大事です
セルフイメージの力は絶大です
ある実験で「優秀な大学教授」のイメージを頭に刷り込まれた被験者は、そうでないグループよりも自分の知識への自信が上昇し、テストの結果が良くなりました
また別の実験では、「一流アスリート」のイメージを思い浮かべた被験者は、運動テストの成績が上昇しました
このようにイメージをするだけで自分の目標を達成しやすくなります
なので、獣の力を上手く使うには、元来「自分は集中力の高い人間」だと思い込むことで、獣が錯覚を起こし集中力を発揮しやすくなります
そのセルフイメージを高める方法は以下の4つです
●ステレオタイピング:
これは上記にも記載した「有能な人を思い描くだけでも人間のパフォーマンスはアップする」という方法。
タスクに取り掛かる前に15~30秒ほど思い描いてタスクを開始するだけでOK
●ジョブ・チェンジング:
問題のタスクに対して、自分に新たな『肩書き』をつける方法。RPGのようにジョブを設定するだけで責任感が生まれ、集中力が上がります。
事例として、アメリカの病院でやる気に欠ける清掃スタッフに、あなたたちは『病院のアンバサダー』ですと肩書きを付けたところ、スタッフのモチベーションが一夜にして激変し、今まで以上にピカピカになったようです
●指示的セルフトーク:
これは独り言によって、集中力を高める方法です。
例えば、「このタスクを早く終わらすためにはどうすればいいか?このタスクの中で最も重要な要素はどこだろうか?」といったようにします。
これは設定したセルフイメージを獣に納得させなければなりません。しかし、定着するまでは、どうしても集中力がブレてしまうため、定着するまでの補助的な機能として指示的セルフトークを使います
●ピアプレッシャー:
これは周囲の友人や同僚などから感じる心理的な圧迫感によって、パフォーマンスを高める方法です。
約2000人のオフィスワーカーを対象としたハーバードの研究で「平均して私たちの生産性の10%以上は隣の席に座る人間の質で決まる」との結論に至った論文がありました
つまり、できる人間に近づけばあなたもできる人間になり、周囲の生産性が低ければあなたの生産性も下がってしまうということです
仕事をしているときに「ゲームしたい」「甘いものが食べたい」「漫画が読みたい」など、ふとした瞬間に別のことを考えてしまうことがあります
マイクロソフトの研究によれば、私たちは平均で40秒に1回のペースで何かに気を取られ、そのたびに「感情」と「理性」の戦いが繰り広げられているそうです
感情が負けてしまうと、せっかくの集中力が途切れてしまい、また集中し直すのに23分の時間が必要になります
この衝動に打ち勝つための方法として「デタッチド・マインドフルネス」があります
これは、感情と今の作業を切り離し、その感情を客観的に捉え、今の作業のみに集中する行為です
例えば、どうしてもゲームがしたくなったら、一旦その感情から距離を置いて客観的にスコアリングしたり、物体に置き換えたりしてみます。
「仕事が思うように進まなくて、ゲームとか別のことで気を紛らわしたくなっている。このイライラは40%くらいかな」
「この気持ちを物体に例えるとどんなものだろうか?色は?形は?サイズは?感触は?」
一度、湧いてきた感情は長くても10分間ほどしか続きません
怒りであれば、ピークは最初の6秒と言われています
この獣の暴走する時間をデタッチド・マインドフルネスによってスルーさせることで、集中状態に戻すことができます
モチベーション管理能力
注意の持続力
セルフコントロール能力
本書に記載されている45のライフハックのうち、個人的に厳選し、独自にアレンジしたものをアクションリストとして記載
食事・休息
- 脳にいい食品(地中海食など)を増やし、脳に悪い食品(加工食品など)を減らす。
- カフェインは、起床後90分以内は摂取しない。90分以上経過した後の集中力が低下した時に飲む
- 食事の記録をとる
- 集中力が低下したら、数十秒から数分の休憩、もしくは15分程度の運動を行う
- それでも回復しなければ、諦めて睡眠を取る
獣の力をコントロール
- 報酬感覚プランニングを行う
- 朝イチは、簡単なタスクから行い、小さな達成感を積み重ねていく
- 小さな不快を重ねる
- 実行前に自分なりの儀式を行うことで、行動のスイッチを入れる
- 儀式→行動を習慣化させるために、週4回以上を2ヶ月以上続ける
獣の力の暴走を止める
- セルフイメージを高めるための自己像(有能な人物、肩書き)や自分の理想の物語を作る
- 指示的セルフトーク(独り言)で集中力を高める
- 意識を逸らす障害を除外し、集中しやすい聖域を作る
- 同じ目標に向かっている仲間を作る、コミュニティに参加する
- 集中が切れたら、客観的に自分を観察する(デタッチド・マインドフルネス)
- 客観的に観察した自分に対して評価を行う